ふくしDX事例
特集
DX推進が拓く福祉の未来弊社のICTツールの活用のきっかけは10年前に遡ります。2010年より特養の施設長として勤務していましたが、当時は紙ベースの書類が多く、記録もシステム化されておらず情報の共有が困難でした。2011年、東日本大震災がありケア記録を電子化したのは2012年になってからのことです。いわゆるケア記録にとどまらず、事故報告書や請求までが一体となっている某社のケア記録システムを導入しました。そこで感じたメリットとデメリットが、現在のDX化における基礎となっています。オンライン上でケア記録を確認することができることで、情報共有が格段に便利にはなりましたが、年数が経過するにつれ、「記録のための記録」になり、せっかくオンラインで情報を取れるのに、スタッフが主体的に「見たい」と思う記録がほとんどありませんでした。「請求に間違いがないような記録」になり、ケア記録からは「人」が消え、加算や請求にカウントされる「数字」に置き換わったような感覚を今でも覚えています。また、オンライン上で完結することで実際にケアの現場に出向いたり、自ら情報を取りに行く姿勢が希薄になったのも大きなデメリットでした。そんなときに出会ったのがケア記録ソフトのケアコラボです。ケアコラボは「ICTを使って日々の努力にスポットライトが当たる機会をつくり、人と人の関係性を深化させること」をビジョンに、「人と人が立場を越えて尊重し、助け合える社会を実現すること」をミッションに掲げています。請求システムと連動はしておらず、「人」を中心として記録に特化しており、これこそがICT化の本質であると思い、2015年にシステムの変更をしたのがすべてのはじまりです。
ケアコラボ導入後は、月に1回、協力事業者としてオンライン会議を開催して、開発者と福祉事業者とで意見交換をする機会がありました(今でも続いています)。
コロナ禍でオンライン会議が世間に広まる4年も前から当たり前の環境として利用していたことで、スタッフとともにICTにおけるリテラシーが高まったのも大きな要素の一つであると思います。
1. 介護・福祉現場に特化したクラウド型記録・情報共有システム「ケアコラボ」の活用によるメリット
ケアコラボは、介護・福祉現場に特化したクラウド型記録・情報共有システムであり、ライフの学校のケア記録業務に革命をもたらしています。
リアルタイム記録と情報共有
発生した事象をその場で記録し、瞬時に多職種間で共有できます。これにより、情報伝達の遅延によるトラブルを防止し、常に最新の情報をもとにした適切なケア判断が可能になっています。現在では当たり前になった画像や動画の投稿も先駆的に取り入れていました。こうした記録を瞬時にご家族と同時に共有できるのはいまでも非常に役に立っています。
当法人では、こうしてケアコラボのシステム導入をきっかけに、現在では、「Google Workspace」、「Teachme Biz」、「freee」といったツールを導入しています。従来の紙ベースや個別管理の業務プロセスを刷新し、持続可能で質の高い福祉サービス提供体制を構築する上で不可欠な要素となっています。
2. 業務効率化のクラウドサービス「Google Workspace」の活用によるメリット
Google Workspaceは、メール(Gmail)、文書作成(ドキュメント)、表計算(スプレッドシート)、プレゼンテーション(スライド)、スケジュール管理(カレンダー)、オンライン会議(Meet)、クラウドストレージ(ドライブ)など、多岐にわたる機能を提供する統合型クラウドサービスです。ライフの学校では、全スタッフにアカウントを付与し、以下の活用を行っています。
情報共有と共同作業の促進
ドキュメントやスプレッドシートを複数職員が同時に編集できるため、会議資料作成、計画書作成、各種報告書作成などの時間が大幅に短縮されています。遠隔地にいる職員間でも円滑な共同作業が可能になり、意思決定の迅速化に貢献します。
法人で使用している公印台帳や伺い書などをそのまま電子化、申請から承認までワークフローすべてがGoogle Workspaceの上で完結しています。
情報の一元化とアクセス性向上
Googleドライブにすべてのファイルを保存することで、必要な情報がどこにあるかを探す手間が省けます。インターネット環境があればどこからでもアクセスできるため、リモートワークや外出先からの情報確認が容易になり、業務の柔軟性が向上しています。
コミュニケーションの円滑化
Gmailによる迅速な情報伝達、Googleカレンダーによるスケジュール共有で、職員間の連携が密になります。Meetを活用したオンライン会議は、移動時間の削減や緊急時の迅速な情報共有に貢献し、業務のスピードアップを実現しています。
ペーパーレス化の推進とコスト削減
各種文書をデジタル化することで、印刷コスト、用紙代、保管スペースが削減されます。また、紙媒体の管理にかかる手間も省け、環境負荷の低減にも寄与します。
セキュリティの強化とデータ保全
Googleの堅牢なセキュリティインフラにより、データの紛失や漏洩リスクが低減されます。自動バックアップ機能により、万が一のシステム障害や誤操作時にもデータの復旧が容易であり、重要な情報を安全に保護できます。
職員のITリテラシー向上
日常的にGoogle Workspaceを利用することで、職員のデジタルツールに対する抵抗感が減り、ITリテラシーが自然と向上します。これは今後のさらなるICT化推進の基盤です。
これらGoogleの活用において、法人内の規定やルール、具体的な使用方法、活用方法などのマニュアルなどをまとめた社内ポータルサイトが便利で重宝しています。

3. マニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」の活用によるメリット
Teachme Bizは、手順書やマニュアルを簡単に作成・共有できるクラウドサービスであり、ライフの学校におけるマニュアル管理と職員教育に寄与しています。
マニュアル作成・更新の効率化と容易化
写真や動画を中心に、直感的な操作でマニュアルを作成できます。専門的な知識がなくても、誰でも高品質なマニュアルを作成できるため、担当者の負担が軽減されます。
迅速な更新と情報反映
業務手順の変更や法改正があった場合でも、マニュアルを迅速に更新し、全職員に最新情報を共有できます。これにより、古い情報に基づいた誤った業務遂行を防ぎ、常に最新かつ適切な手順で業務が行われるようになります。
職員教育・研修の質の向上と効率化
文字だけでなく、写真や動画で手順を示すことで、より直感的に理解を深めることができます。とくに、介護現場の複雑な介助技術や医療行為のプロセスを視覚的に伝えることで、新入職員の習熟度向上や既存職員のスキルアップに貢献しています。
知識・技術の標準化
属人化しがちな業務知識や技術をマニュアル化することで、ケアの質を均一化し、どの職員が担当しても一定水準以上のサービスが提供されるようになります。
とくに、Teachme Bizは就労支援事業との相性がよいと感じています。仕事の内容を作業分解をして、画像・動画で記録したマニュアルを整備することで、スタッフが障がいがある利用者に説明をしながら作業ができるようになりました。高齢事業における間接業務(シーツ交換や洗濯など)も作業分解をし、マニュアルを整えることで、就労支援事業の仕事の幅も増えていき、ケアスタッフが注力する専門性の高い業務である直接介助に専念できるようになっています。
4. 会計・勤怠ソフト「freee」の活用によるメリット
freeeは、会計業務と勤怠管理を効率化するクラウドサービスであり、ライフの学校のバックオフィス業務を大幅に改善しています。
会計業務の効率化と見える化
入力作業の自動化
銀行口座やクレジットカード※との連携により、取引データを自動で取り込み、仕訳候補を提案してくれます。これにより、手入力によるミスを減らし、記帳作業にかかる時間を大幅に削減できます。
※ライフの学校では拠点ごとにクレジットカードを作成しており、決済ができる経費はすべてカード決済している。
経理の専門的な知識が不要でわかりやすい
会計の専門知識がなくても直感的に操作できるインターフェースが特徴です。これにより、経理担当者の負担を軽減し、ほかの重要な業務に集中できる時間を生み出します。
リアルタイムな経営状況把握
損益計算書や貸借対照表などの財務諸表がリアルタイムで自動作成されるため、常に正確な経営状況を把握できます。
勤怠管理の効率化と正確性向上
打刻の簡素化
パソコンやスマートフォンからの打刻、ICカード打刻など、多様な打刻方法に対応しており、職員は自分のスマートフォンにて手軽に勤怠記録を行っています。
給与計算との連携
勤怠データが自動で給与計算に反映されるため、手作業による集計ミスや計算ミスを防ぎます。給与計算業務にかかる時間と労力を大幅に削減し、給与担当者の負担はだいぶ軽減していますが、そもそものスタッフの入力間違いなどが毎月発生するため、まだまだ課題は残っています。それでも年末の大作業、年末調整は全スタッフが各自、自分で入力を行うため、かなりの業務効率化が図れています。
有給休暇管理の自動化
有給休暇の付与日数や取得状況を自動で管理し、職員からの申請もオンラインで処理できます。これにより、有給休暇の管理にかかる手間を削減し、適切な休暇取得を促進しています。


まとめ
すべて簡素化し、生産性を高めるために効率性に舵を切りすぎると、福祉の仕事で一番大切な人とのかかわり(対人援助)の部分が欠けてしまいます。「人が中心」である限り、ICTをどれだけ活用しても、どうしても非効率に見える部分、あるいは効率化すべきではない部分が存在します。むしろ、そこにこそ福祉事業の根幹を成す「大切なケアの視点」が宿っています。DXは、単に便利なツールを導入する行為ではなく、法人の根幹にある理念や哲学を具体的な業務やサービスを通じて見える化するプロセスともいえます。当法人がICTツールを多用しているのは、まさに「人を中心としたケア」、「支えあって、学びあってすべての人生を豊かに」というミッションをテクノロジーの力を活用して追求していることの表れであり、法人のブランドイメージや対外的な信頼性を高めるうえで非常に有効な戦略となっています。DXは、法人の「ありたい姿」を内外に示す羅針盤のような役割を果たすのではないでしょうか。
