ふくしDX事例

特集

DX推進が拓く福祉の未来

保育事業におけるICT導入 保育の質を高めながら生産性を向上する 片山 雄基 ふくしDX推進特別委員会 専門委員 社会福祉法人 種の会 理事長

1. 保育の質向上のため、職員間の情報共有を大切にしつつ、ICTを活用し、業務改善を図る

種の会は、兵庫県、大阪府、神奈川県、東京都で、こども園・保育園・小規模園・児童館・学童コーナーを運営する法人です。

子どもの経験や学びを保障することは重要なことです。いかに日常業務の無駄な作業や時間等を省き、業務を見直し、業務の効率化を図るのか、大きな転換が迫られていると思います。現場では、事務作業の軽減と保育の質向上を兼ねてICTツールの活用が検討され、導入施設数が増えています。日常の保育記録や保育計画などの帳票類の入力や管理のみならずオンラインシステムを駆使した取組が行われています。

当法人のICT導入の取組では以下の2点をポイントに進めています。
① 子どもの育ちを大切にしつつ、いかにICTを利用し、保育実践を向上させるか。
② 日常業務を改善し、地域社会とのつながりづくりのため、いかにICTをうまく活用するか。

WEB会議の活用

園を不在にする職員もオンタイムで会議に参画できるようになりました。メンバー全員が参画するための時間調整も以前よりスムーズです。それまでは、欠席職員がいると別機会で職員から職員へ口頭で伝達していましたが、現在は録画記録で確認してもらうなど伝達に要する時間や連携する中身が変化するようになりました。

また、姉妹園間では園長会、主任会、クラス担任による年齢別の会議、栄養士同士が交流する食育会議、看護師同士が交流する保健会議、運動遊びを研究する研究会など、これまでは園を離れて集まるようなケースが多く1回の会議のために半日~1日を費やすこともありました。しかし、WEB会議システムの活用で園内にいながら参加できるので短時間開催を繰り返しても負担感が少ないため、効率よく実施できつつあると実感しています。

会議記録はAIにお任せ

クラス会議、乳児会議、幼児会議、園全体会議、管理職会議など園内で行われるすべての会議の記録は、スマホやPC等を起動し、AIに音声を聞き取らせて文字を起こしています。膨大な量を読み取ってもらった後、どのように編集してほしいかを指示することによって、量的にも質的にも適切な議事録ができあがります。

今年度、職員の会議録作成時間は格段に減っており、よろこびの声が聞こえています。

WEB研修の活用

公開保育等の人と人とがふれあいながら学ぶような研修では臨場感が大切な場合もあり、対面式が好ましいこともありますが、知識をアップデートするような講義形式の理念研修や危機管理研修などはオンラインでも受講しやすいと思います。園と研修会場との往復の移動時間が短縮できることによるメリットは大きいと考えます。

マニュアルの動画化

これまでのマニュアルは文字中心で作成されたものがほとんどで、それを活用しながら保育実践を行ってきました。しかし、文字は読む時間がかかる、ポイントが伝わりにくいという課題がありました。現在は、より保育者がイメージしやすいように写真を活用するという方法が増えています。

さらに、動画を用いたほうがより情報が伝わりやすく、保育者が実践しやすいと考えられます。職員間での業務確認や引継ぎ等において短期間で一定水準の知識を得ることができます。実践に活かしやすい内容に変わってきており、業務中の対話の質が高くなっているように思います。

2. ICTの活用で、子どもの学びや、地域・保護者との連携をスムーズに。地域とのつながり、輪を広める

ICTを用いることで保育準備や保護者への伝達、保育説明なども効率よく実施できるようになりました。また、地域への各種案内や連携、広報についても効果的に実施できる可能性が広がります。

子どもの登降園管理と登園状況に応じて、保護者から徴収する保育料については、アプリ等を用いることで事務負担の軽減につながるケースがあります。

子どもの学びのための方法としてのICT

例えば、歌やダンスの専門家が実践している動画や、職員が演じる動画を子どもたちが鑑賞することで、子どもたち自身が意欲的に歌やダンスに没頭し表現していく姿が見受けられます。一方で、保育者はゼロから準備し、教え込む必要がなくなります。子どもたち自身が考え、子ども同士で意見し、工夫するきっかけが生まれ、職員側は時間に余裕が生まれることで、子どもたちとのていねいなかかわりにつながっています。

オンラインで実施する行事・保育説明会・保護者懇談会

園での行事をオンラインでライブ配信することで、来場がかなわなかった保護者の方や地域の方、遠方の親戚、高齢者の方がたにも子どもたちの成長の様子を見ていただくことができるようになり、たくさんの喜びの声をいただいております。

保護者への説明会や懇談会も同様で、来園しなくても場所を問わずに施設の考えを伝えることができるため出席率の向上が望めます。録画機能等も充実しているので当日参加できなかった方がたにも、議事録のみではなく録画映像を提供することで喜ばれました。

これらの方法は体調不良等で現地参加が難しい方がたへの支援にもつながり、安心安全な方法として、好評です。

園だより等のご案内を電子媒体やアプリで提供

以前は紙媒体で提供していた「園だより」を電子媒体で届ける方法へ変更しました。配布するための印刷時間と印刷費用、製本時間を省くことができ、職員の労働時間短縮につながっています。保護者にはアプリを介して通知連絡がいくため、いつでもどこでも気軽に閲覧可能となり、紛失の心配もなく保管にも困らなくなったとの感想をいただいています。

このアプリを活用することで、過去の園だよりも閲覧が容易になり、また、リマインド機能などもついているため、持参物の忘れ物が減りました。

このほかにもSNSを用いて地域の子育て世帯へ子育て支援の情報に関する呼びかけなども行って、園と地域とを結ぶ役割も果たしています。

さらに栄養士からの手書きの手間についての声を受け、検食簿や給食日誌、献立などを「Googleスプレッドシート」を使うことでデジタル化を進め、業務の効率化や情報の共有がしやすくなることをめざしています。

このように、ICT化を進めることで、保育の質を高めながら、保育現場の生産性向上につながる取組へと進化させることができる可能性があります。

3. トラブル防止のための配慮事項

変化を伴う方法を取る際には準備期間や経過措置期間の設定を!

新しいことをはじめる際には、準備や経過措置の期間を設けておくことが大切です。例えばライブ配信をはじめる際には、職員が獲得すべきスキルを取得するための時間と試す時間を確保すること、保護者に協力を仰ぎながら進めることも大切です。園だよりの事例のように紙媒体から電子媒体へ変更する際には保護者のIT環境を確認のうえ、経過措置の期間を設けて進めると受け入れてもらいやすくなるため、環境が整うまでの必要な期間を見通すとトラブルを回避できると思います。

ICT分野が得意な職員のモチベーションUPと多くの職員のレベルアップ

ICTの各種システムを駆使するためには、パソコン操作が得意な職員が活躍できる場や機会を提供し、操作に抵抗がある職員にはスキルを身につけるための勉強会を行うなどフォローが必要です。また、得意な方が苦手な方をフォローできるような仕組みづくりをすることで、職員全体のレベルがアップしていくと思います。